FX取引では「なんぴん」厳禁

上がると思って買ったが値下がり続け、損失を出しているのに、損切りせずにさらに買い増す。これがいわゆる「なんぴん買い」(逆の場合はなんぴん売り)ですが、この行為はFX取引においては、もっともお勧めできないものです。

たしかに、「なんぴん買い」は平均買いコストを引き下げますから、勝つ確率は高まります。しかしその代償として、戻らなかった場合の大きなリスクを同時に抱えることになります。

たとえば、AさんとBさんが、ドル/円市場で、相場が上がると予測して、100万ドルを1ドル=90円で買ったとしましょう。しかし値が下がり、1ドル=89円となりました。

Aさんは、ここで損切りを実行することにしました。このときの損失は、

(90円-89円)×100万ドル=100万円となります。

しかしBさんは、1ドル=89円でさらに100万ドルをなんぴん買いしました。この場合、平均コストは1ドル=89.50円です。つまりBさんは、相場が1ドル=89円から、1ドル=89.50円まで戻ることを期待しているということです。

もし、Bさんの期待どおり、1ドル=89.50円まで戻ったら、損を出さずに逃げ切れます。

(89.50円-89円)×100万ドルー(90円-89.50円)×100万ドル=0円

しかし、相場が同じ値幅である50銭さらに下がり続けて1ドル=88.50円まで下落したら、Bさんは「なんぴん」しているだけに、大きな評価損を抱えてしまいます。1ドル=88.50円で耐えきれず損切りをした場合、損益は

(90円-88.50円)×100万ドル+(89円-88.50円)×100万ドル=200万円

つまり、損益ゼロ(=負けないディール)を期待することと引き換えに、200万円の損失リスクを負うこととなるのです。

 

 

小さな期待利益に対して、大きな損失リスク(起死回生)を抱えているのが「なんぴん」です。そのときの心理状況は「負けたくない」という思いが先走り、評価損をゼロに持っていくことだけに注力する後ろ向きの思考だけとなります。

言い換えれば、相場が戻ることだけを神頼みするような精神状態となります。相場が下がり続け、一度ならず複数回それも虎の子資金で「なんぴん買い」増しを続けて勝てない状況が続くと、もはやFXをする精神状態ではなくなります。

脳裏には家族の顔が浮かんだり、自己破産まで想定してくると会社の上司の顔まで登場してきたり、相場が戻ること以外は何も手がつかなくなります。

万が一、相場が戻って市場退場を免れたとしても、勝てない時が続いた長い精神的苦痛のあとだけに、やり直す気力も失せ、2~3日相場から離れて頭を冷やしたくなるのが実情です。相場は、そのようなときに大きく動くものです。「なんぴん」は、その後の絶好の収益機会をみすみす逃してしまいがちなのです。

間違ったら潔く損切りしましょう。ましてや、FXのように一個人対市場であれば、勝てないのは時の運と思い、予測と逆にいけば、機械的に損切りをして、万全の精神状態で次の取引にのぞむことです。FXは勝率を上げることが目的ではありませんから。